神崎:「調べてみたんだが、ルビって印刷用語なんだな。『振り仮名』という呼称の方が適切か」
京介:「言いやすいんだけどね、ルビって」
神崎:「振り仮名については反対論もあるそうだ。もっとも振り仮名そのものに対するものではなくて、難字に対するものだが」
京介:「簡単な字で書くように、ってこと?」
神崎:「そうらしい。山本有三という作家が提唱したようだな。初めから簡単な文字を書けば、確かに振り仮名はいらない」
京介:「難しい問題だよね。簡単な字……というか、簡単な言葉で書いた方が確かに分かりやすいんだけど、文字の面白さが薄れるんじゃないかな。『簡単な文字、言葉』だけだと、ものたりなくなるかもしれない」
神崎:「場合によりけり、とも思えるな。ただ、むやみやたらに難しい文字や言葉を使いたがる奴がいるのも事実だ。本当に意味を理解した上で使っているのか怪しい奴もいる。作家はプロだから勉強しているだろうが、ごく普通の輩にそういう奴がいるからな。彼らはちゃんと勉強しているのかどうか」
京介:「意味を知っているからこそ、難しい言葉を使うんじゃないかい?」
神崎:「そうとは限らんな。本当に物知りだったら、簡単な言葉で言い直せるはずさ。難しい言葉を使いたがる人間のうち、果たしてどれだけの人間にそれが出来るかな?」
京介:「うーん僕には出来ない。知らないからね」
南子:「ねーねー、なに話してるの?」
神崎:「難しく言うと、可読性を高めるための手法とその手法を必要としない表現法という相反する手法に対する……」
南子:「やーな性格! わざわざ難しく言わなくたっていーじゃない。ね、ね、京介?」
神崎:「難しい文字を使った覚えはないな」
京介:「文字自体は簡単だけど(苦笑)」
神崎:「難字と難語は同義語とは言えない事がよく分かる例だったな(笑)」
南子:「また難しく難しく言う〜」
神崎:「結局の所、本質は別にあると俺は思うね。山本さんが求めた物は『読みやすく分かりやすい文章』だったんだと思うが、『読みやすい事』と『分かりやすい事』は似て非なる物だ。分かりやすい文章を書く事こそ本質なのであって、振り仮名をどうこうというのは所詮そのための手段に過ぎない。もちろん難しい言葉ほど読み方が難しい事が多いのは事実だろうが、その文字の組み合わせが本質をよく表す言葉も多い。その意味で、分かりやすくするための『振り仮名』も時には必要だろうと思う。
南子:「だから、もっと分かりやすく言ってよ」
京介:「分かりやすい文章を使う事だけ考えた方がいいって事だよ」
南子:「別に長々言うほどの事じゃ、ないじゃない。当たり前の事でしょ?」
神崎:「人間は常識ほどよく見失うものさ」
京介:「ところで、HTMLに振り仮名はあるんでしょうか? 知っている方、済みません教えて下さい」
神崎:「自分で調べるのが筋だ。はっきりいって」
2000/09/02 筆者追記
このページを書いた当時、私は ruby 要素を知りませんでした。この要素は現在 IE5 で使用できますが、まるきり IE5 の独自仕様というわけではなく、いずれ HTML に正式採用される新機能を先取りしたもののようです。待ち遠しいですね。