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狐は潜む


神崎:「おや? 曽根、珍しいな。お前がメーカー製パソコンを触っているとは。――もしかして友人の物なのか?」
曽根:「当たり前じゃねーか。俺は自作一本やりなの。流石にノートは自作出来ねーが、デスクトップは自作路線を譲れねーな」
神崎:「じゃあなんだ? 修理依頼か?」
曽根:「ちげーよ。ハードディスクの入れ替え。持ち主出来ねーんだ」
神崎:「何GBにするんだ?」
曽根:「25GB」
神崎:「……なんだって?」
曽根:「25GBだよ。知らねーのか? 25GB安くなったんだぜ」
神崎:(頭に手を当てて)「で、何に使うんだ」
曽根:「お前いつもそれか。わかってねーなー。ハードディスクは使う分を用意するんじゃなくて、用意してから使い方を考えんだ」
神崎:「分かりたいとは思わんな」
曽根:「自作やってる奴の台詞かよ。ようし、電源入れてみっか」

 ぴか、……しーん

神崎:「――動かんな」
曽根:「なんだこりゃ? どーなってんだ?」
神崎:「こういう症状ははじめて見るな。画面は出ないし、電源とサスペンドとディスクのランプが全部点灯しているじゃないか」
曽根:「やっぱ電源ボタンも効かねーな。[Alt] + [Ctrl] + [Delete] も効かねーし。BIOS の初期化処理がそもそもおかしくなってんのか? に、したってよ、持ち主ん家じゃちゃんと動いてたんだぜ」
神崎:「ここに置いてから電源は入れたのか?」
曽根:「いいや」
神崎:「なら輸送時のトラブルかもな。どこかの接触が悪くなってはいないか?」
曽根:「接触ったってな……」
神崎:(きゅーん)「おや? 5秒押し電源断は機能しているじゃないか。この機能は BIOS が制御しているものだと思ってたんたが」
曽根:「わけわかんねーな。こいつ(苦笑)」

 ぼやきながら再度電源を投入する曽根。――ところが。

パソコン:(きゅいーん。びっ!)
神崎:「おい、画面」
曽根:「は? ……動いてんじゃねーか」
神崎:「おい曽根、狐か狸を見落としただろう? ちゃんと中を調べろって言っただろうが」
曽根:「おお、わりいわりい。PentiumIII の陰に狐が一匹隠れてやがった。いやぁ、やっぱ物事はよく調べねーとなぁ……

 そんなモン、いるわけねーだろ!

神崎:「狐につままれた気分だ」
曽根:「俺、機械にからかわれてんじゃねーだろか」
パソコン:(わかってんじゃん)
曽根:「ん?!」


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