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ドライバ無しの中古品

〜FMV-J182 PCMCIAイーサネットカードの話〜
神崎:「なんだそれは?」
京介:「PCカードの LANカードだけど」
神崎:「箱はおろか説明書もドライバディスクもないじゃないか。こんな怪しい物、なんで手に入れたんだ?」
京介:「お父さんが買ってきたんだよ。お父さんの知り合いが見つけてきたんだって」
神崎:「で、ドライバディスクもなしにどーやって動かすんだ?」
京介:「Windows95/98 に最初からドライバが入ってるんだって」
神崎:「Win95 にも? 本当か? (かちゃかちゃ)ハードウェアウィザードから FUJITSU の…… FMV-J182、なるほど、確かに入っているな」
京介:「入ってる? よかった。もし無かったらどうしようかと思った」
神崎:「おいおい(溜息)。なんだってそんな危なっかしい物を仕入れて来るんだ」
京介:「安かったって言ってたと思う」
神崎:「親父さん、パソコン強くないんだろう? 中古品は初心者が手を出すもんじゃない。特にこんな何も付いていないようなものは尚更だ。だてに安いわけじゃないって事ぐらい分かりそうなもんだが」
京介:「お父さんの知り合いがパソコンに強いんだよ。その人に勧められたんだろうね」
神崎:「なるほどな。ま、悪い癖は付けないようにな。安さにばかり気を取られていると、いずれ動かない物をつかんでしまうぞ」

 うんうん、そうなんです。でも神崎君、こういう事は身にしみないとわからないんですよ。

京介:「さて、ハブの準備も出来たし、早速ノートに LAN カードを入れて、と」
神崎:「京介ん家もいよいよ家庭内 LAN か。随分と手軽になったものだな」
京介:「ええと、自動検出で……あれ?」

 「ドライバが見つかりませんでした」

神崎:「――そんなばかな!」
京介:「再挑戦! ……やっぱり駄目だよ」
神崎:「ひょっとしてハードウェアウィザードの一覧から直接指定してやらないといけないんじゃないか?」
京介:「そうなのかな。えーと、一度そのまま完了して、ハードウェアウィザードを開いて……」
神崎:「そうしたらネットワークカードの一覧に FUJITSU が――」
京介:「――ない」

 二人とも一時呆然。

神崎:「そんな馬鹿な――」
京介:「えぇ! なぜ? さっきあったんだよね?」
神崎:「こっちのデスクトップにちゃんと……あるぞ」
京介:「……あるね」
神崎:「は! まさか」
京介:「まさか?」
神崎:「PC-9821版Windows95 には、FMV-J182 のドライバが入ってないんじゃないか?」

 そう、このノートパソコンは PC-9821 なのです。前述のデスクトップは、PC/AT互換機だったんですね。

京介:「え? あ! そうか、富士通って PC/AT互換機メーカーだから、PC-9821版にはドライバが収録されなかったんだ」
神崎:「おいおいおいおい……PCMCIAデバイスに PC-9821も PC/ATもないだろうに」
京介:「でも、どうしよう?」
神崎:「富士通の Webサイトを調べよう。新バージョンのドライバが上がっているかもしれない」

 残念ながら、こういう時に限って期待は裏切られるものです。

京介:「ない……」
神崎:「かけらもない……」
京介:「どうしよう? 新しいのを買ってくるしかないか。やっぱり、こういう怪しい物は初心者が手を出す物じゃないんだね(実感)」
神崎:「――引っこ抜くか」
京介:「は?」
神崎:「こっちのデスクトップにはドライバがあるんだ。引っこ抜いて98ノートに入れてみよう」
京介:「恐ろしいことを簡単に言う……」
神崎:「簡単だと言った覚えはない。(かちゃかちゃ)」
京介:「引き抜くってどうやって?」
神崎:「要はドライバファイルと、その情報が記されたファイルを探せばいいんだ。デバイス情報ファイルは Windowsフォルダ直下の Inf フォルダにあるから、そこから探す。そうだな、fujitsu とか fm何とかといった名前のファイルがあれば……」
京介:「う、ないよ」
神崎:「FMV-J182の情報ファイルそのものはあるはずなんだ。だから……『Netfjvi.inf』? 怪しいな。(かちかち)」
京介:「あ! Fujitsu Network Interface Cards だって」
神崎:「いや、違うな。これは ISAの方だ。となると、『Netfjvj.inf』……こいつか! (かちかち) For PCMCIA! こいつだ!」
京介:(なんで見つけられるんだろう)「これをどうするの?」
神崎:「まずこのファイルをフロッピーに保存する。そして……Copyfiles……『f3ab18xj.sys』、これだな。たぶんこれがドライバファイルだ」
京介:「検索! ……えぇ! ないって言われた」
神崎:「おかしいな……いや、まてよ、ひょっとしたらこのドライバファイルは普段圧縮ファイルに保管されているのかもしれないな。だとしたら、ドライバをインストールすれば解凍されるはずだ」
京介:(どうしてそう次々にアイディアが浮かぶんだろう)「じゃあ空インストールするんだね? よっと……で、検索……あ! あった!」
神崎:「ようし、それもフロッピー行きだ」

 システムのプロパティからデバイスマネージャを開き、「不明なデバイス」のままになっている「FMV-J182」を開いてドライバの更新をクリック。一覧表示の中にある「ディスク使用」を押して、先ほど作成したフロッピーを指定。二人は緊張の面もちで画面を眺めます……。

京介:「……『FMV-J182』! 出た!」
神崎:「やってみるもんだ」
京介:(じーっ)
神崎:「なんだ?」
京介:「どうしてそんな事ができるんだい?」
神崎:「『出来た』のは結果に過ぎないな。単にあきらめが悪いだけだ。――もっとも、あきらめが悪くないとパソコンは上達しないだろうね」


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