今回は誤字らしい誤字を見かけませんでした。ただ、二カ所ちょっと気になったので一応書いておきます。
アクセルをめい一杯あけ
本当は「めいっぱい(目一杯)」ですが、わざとの可能性もあるので誤字なのかどうかわかりません。(^^;)
これから出会うであろう風景を、景色を、
風景も景色も同じですよね。ただこれもわざとそうした可能性があるので。
ご存じの方も多いのでしょうが、私は自転車で走るのが好きです。
決してスピードを出すわけでもないし、泊まりがけで県外まで出て行くわけでもないのですが、普通の恰好と荷物のまま数十キロの距離を不意に走ってしまったりします。おかげでよく地元民と間違えられて道を聞かれるのですが。(^^;)
走るという事は、きっといろいろな魅力のある事なのでしょうね。だからろくに用意してもいないのに、不意に走り出したくなる。
我らが土ころびさんの新作「Mind Warming up」は、そんな「走る」時に感じる気持ちをうまく描いた作品です。もっともこちらはバイクですが(笑)。
まず結論から言うと、いい作品です。すでに何人かの方から指摘があったように描写がいいですね。また、話の流れ方が実になめらかです。私はこの流れのなめらかさが土ころびさんの課題の一つなのじゃないかなあと思っていたのですが、今作品を見る限り私の心配は杞憂のようです。
それから、今作品にはバイクに乗っている方ならいろいろ共感する事も多かったのではないかと思います。私は残念ながらバイクに乗った事がないのでわからない部分も多かったのですが、作中に出てくる「ツアラーブルー」には共感するところがありました。自転車で遠乗りをしている時に、不安や迷いを感じる事が確かにあるのです。
共感できる部分が多いというのはいい作品を書く上で必要となる条件の一つでしょう。この作品にはそんな部分が(きっと)たくさんあるのです。
また、タイトルがいい。Mind Warming up。ツーリングをしているうちに、ツアラーブルーが吹き飛んで熱くなってくる心……この作品の主題をうまく表した言葉ですね。うまいです。
ただ、それだけにこの部分を本文中でもう少し突っ込んで欲しかった、という気持ちも少しあります。私が気になったのは以下の箇所。
そうしているうちにふと気づく。さっきまで引きずっていたツアラーブルーが消えていることに、そして、さっきまでとは逆に前に前に進もうとしている自分自身に…。
これをもっと描写すべきだ、と私は思うんです。もっとわくわくしている主人公を見せてほしい。いろいろな景色をもっと見たい、もっと見たいと感じている主人公を見せてほしい。そしてふと気づいて、笑う。ツアラーブルーなんてそういえば感じてたんだっけ。そんな主人公を描いて欲しかった。
あと、せっかくエンジンを暖める事と心を温める事をかけているんですから、もう少し描写で補って欲しかったなあと思う箇所があります。
冒頭で主人公が寒がる描写がないですよね? エンジンはよく冷えていて、なかなかかからないという描写がありましたけど、主人公は寒そうにしていないんですよね。ここで主人公が寒がらないので、中盤の風があまり冷たそうに感じないんです。一つちょこんと寒そうにする動作をいれてやった方がよかったと思います。
要は、冷たい時と暖かい時のメリハリをもう少しだけ付けて欲しかった、という事です。あまり付けすぎると作風になじみませんが、少し欲しい。そんな感じです。
以上、今回の批評はどうでしたか? 辛口批評期待された方ごめんなさい(笑)。いい作品なんですもん、無理に辛口にはできません。
なにはともあれ、次回作も期待しております。(^^)/
例によって追伸。この批評を読まれた方へ。この批評に対する批評もご自由にどうぞ。